第3回:【戦略編】武器を見つけ、欲しがる人へ届ける

――「強み」と「顧客」のジグソーパズルを完成させる

「戦略」という言葉を聞くと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。 マイケル・ポーターの「コストリーダーシップ戦略」や「差別化戦略」……。経営学の教科書には、頭の良い先人たちが編み出した立派な理論が並んでいます。もちろん知っているに越したことはありませんが、無理に覚える必要はありません。

なぜなら、戦略に絶対的な正解の定義はないからです。 そこでこのブログでは、明日から使える定義として、戦略を**「自社の強みを、顧客にどうやって届けるか」**とシンプルに定義します。

要素はたったの3つです。

  1. 顧客ニーズ(誰が何を欲しがっているか)
  2. 自社の強み(自分の武器は何か)
  3. ニーズを満たす方法(どうやって届けるか)

今回はこのうち、最も重要で、かつ多くの経営者が勘違いしやすい「顧客」と「強み」の分析について深掘りします。


1. 順番はどちらでもいい。ただし「強み」は独りよがり厳禁

「顧客ニーズから考えるべきか、自社の強み(シーズ)から考えるべきか」 これについては、私はどちらが先でも構わないと考えています。「これを売りたい!」「こんな世の中を作りたい!」という情熱(シーズ)を起点にして、それがハマる顧客を探すのも立派な経営判断だからです。

ただし、一点だけ注意があります。 「強み」というものは、独りよがりでは絶対に成立しません。 あなたがいくら「これは素晴らしい技術だ」と胸を張っても、競合他社が同じものを持っていたり、顧客がそこに価値を感じていなければ、それはただの「特徴」に過ぎません。

強みとは、**「競合と比較して、顧客に選ばれる理由となっている特徴」**のこと。 まずは、ここを冷静に見極める必要があります。


2. 「強みの種」を見つける――BMCを活用した棚卸し

いきなり「あなたの強みは?」と聞かれても、枠組みがないと考えにくいものです。そこで、ビジネスモデル・キャンバス(BMC)というテンプレートを使って、自社の「特徴」を漏れなく洗い出してみましょう。

BMCには9つの要素がありますが、特に強みが隠れているのは以下の4つです。

  • 価値提案: 顧客が「これこれ、これが欲しかったんだよ」と喜んでいるポイントはどこか?
  • 主なリソース: 「人・モノ・金・情報」。目に見える設備や機械だけでなく、ノウハウ、人的スキル、ライセンス、ブランドなどの「見えない資産」も重要です。
  • 主な活動: 独自の製造工程、徹底したアフターサポートなど、自社ならではの動き。
  • 主なパートナー: 特別な仕入先や、信頼関係の深い協力会社。

これらを、できれば複数人で「遊び感覚」で出し合ってみてください。 「うちは納期だけは絶対に破らないよね」「あの社長の業界知識は変態的だよね(笑)」といった、現場の何気ない会話の中に、ダイヤモンドの原石(強みの種)が転がっています。


3. 業界標準と比較して「差異」を抽出する

自社の特徴を出し切ったら、次は「外の世界」を見ます。 同様の要素について、競合他社や業界標準はどうなっているかを調べます。ここで威力を発揮するのが、**生成AI(ChatGPTなど)**です。 「〇〇業界の一般的な製造業のコスト構造は?」 「競合他社A社の強みと弱みを分析して」 と問いかけるだけで、大変なリサーチ労力を大幅にカットできます。

そして、「自社の特徴」と「業界標準」を比較して「差異」を抽出します。

  • 業界では当たり前: 自分が強みだと思っていたが、他社もやっていること。
  • 自社だけの差異: 他社がやっていない、あるいは真似できないこと。

この「差異」が、顧客にとっての喜び(便益)に繋がっているとき、それは本物の**「強み」**に昇華します。ここでも、抽出した差異をAIに読み込ませ、「これは顧客にとってどんなメリットがあるか?」と壁打ちしてみるのがお勧めです。


4. 顧客ニーズを「言語化」する

強みが見えてきたら、次はそれを欲しがる「顧客」の分析です。 ここで重要なのは、単に「〇〇製造業」と属性で呼ぶのではなく、**「顧客が何を求めているか(真のニーズ)」**を言語化することです。

すでに顧客がいる場合は、徹底的に調査しましょう。

  • なぜ、数ある会社の中から自社を選んでくれているのか?
  • 自社の何に対して、お金を払ってくれているのか?

「精密な加工技術」を買っているように見えて、実は「設計段階からの相談に乗ってくれる安心感」を買っているのかもしれません。この「選ばれる理由」と、先ほど特定した「強み」がガッチリと合致しているかを確認します。


まとめ:凸凹がはまる瞬間を探す

戦略とは、難解な数式ではありません。 **「自分の武器(強み)を見つけ、それを喉から手が出るほど欲しがる人(ニーズ)に売るために、どう動くか」**を考える。ただそれだけのことです。

顧客起点でも、シーズ起点でも、最終的に「顧客の悩み」という凹(ヘコミ)に、「自社の強み」という凸(デッパリ)がピタリとはまれば、ビジネスは自然と回り始めます。

経営計画を「数字の羅列」にしないために。 まずは、あなたの会社にしかない「凸」を、BMCを使って探すところから始めてみませんか?

今日はここまでにします。次回は、この強みをどう届けるか、具体的な「戦略の実行(How)」についてお話しします。

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