第1回:【完全保存版】使える経営計画策定の全体像

――「絵に描いた餅」を「実行可能な地図」に変える10ステップ

「経営計画を作っても、現場が変わらない」 そんな悩みを抱える経営者の多くは、財務数値(目標)と現場の動き(行動)が乖離しています。本稿では、プロの会計士が実践する、戦略と数値がガッチリ噛み合う全体像を提示します。

1. 現状把握:すべての出発点は「痛み」の特定

まずは「己を知り、敵を知る」ことから始まります。自社の財務データを深掘りし、どこに課題があるのかを発見します。この際、自社内だけで完結せず、競合の財務状況や業界平均数値を調査してください。業界標準と比較して、自社の利益率や生産性がどう違うのかを知ることで、目指すべき「改善の伸びしろ」が明確になります。

2. 顧客と「真のニーズ」の再定義

次に、誰に価値を届けているのかを徹底的に考えます。

  • 抽象化: 特定の得意先を思い浮かべ、その共通点を抽出します。「30代男性」といった属性ではなく、「納期よりも品質の安定を最優先する製造業の購買担当」といったレベルまで抽象化し、ターゲットを明確にします。
  • 便益の深掘り: 顧客は商品そのものではなく、その先の「解決策」を買っています。なぜ自社を選んでいるのか、その真の理由を言語化します。

3. 強みの発見:その「特徴」は本当に「強み」か?

ビジネスモデル・キャンバス(BMC)の各要素を使い、自社と業界標準を比較します。 ここで重要なのは、「特徴=強み」ではないということです。どんなに優れた技術でも、競合が持っていたり顧客が価値を感じていなければ、それは単なる「特徴」です。強みとは、顧客が存在して初めて成り立つ概念であり、**「顧客が自社を選ぶ決定的な理由」**になっているものだけを指します。

4. 戦略立案:強みが生きる道を切り拓く

特定した強みを、どうやって効率的に顧客へ届けるか。その「経路」と「方法」を考えます。ここが戦略の骨子となります。

5. 定量的目標の設定:理想と現実の交差点

  • 主観的目標: まずは経営者の「5年後、10年後にこうなりたい」という直感的な理想を置きます。
  • 市場環境の調査: 生成AIや専門データを活用し、将来の市場規模や想定シェアを客観的に算出します。
  • シミュレーション: ステップ4で考えた戦略を実行した場合、そのシェアに届くのかをAI等でシミュレーションします。

6. 経営目標の微修正

シミュレーションの結果、目標に届きそうにない場合は、目標を調整するか、戦略を根底から見直します。「頑張れば届きそう」という絶妙なラインまでチューニングすることが、組織のモチベーション維持には不可欠です。

7. 売上目標をKPIに分解する

ここが計画倒れを防ぐ最重要ポイントです。

  • 配分: 売上目標を顧客別、商品サービス別に配分します。
  • 分解: ターゲットに対する「カスタマージャーニー」を描き、各要素間のコンバージョンレート(転換率)を記載します。
  • 逆算: 生成AI等を活用し、目標売上から逆算して「必要な商談数」「必要なリード数」などの数値を算出します。 ここで数値を置かないから、財務と行動が繋がらないのです。

8. 売上以外の数値(原価・販管費)を算定する

この段階では、一旦、自社の過去実績(原価率・販管費率)を乗じて計算しておきます。 「課題を解決してコストを何%下げるか」という具体的な改善幅は、次のステップで「行動」が決まった後に反映させるため、ここでは土台を作るだけでOKです。

9. 行動計画の立案:売上とコストの「打ち手」を確定する

ここで、すべての数値を「具体的な行動」に変換します。

  • 売上の行動計画: ステップ7で算出したKPIを達成するために「何を行うか」を数字で考えます。例えば「月50件の提案が必要だが、リソース的に40件しか無理」だと判明すれば、他の商品の目標を上げるか、売上目標を切り下げます。このリソースとの突合こそが、計画を「絵に描いた餅」にさせない唯一の方法です。
  • 売上以外の行動計画: 主にステップ1で判明した課題への対応策を考えます。業界平均に比べて劣っている部分(例:高い廃棄率、過剰な広告費など)を改善するために「具体的に何をするか」を決めます。
  • 数値への反映: その行動によって削減できる費用を見積もり、ステップ8の数値計画を更新します。

10. 最終チェックと完成

最後に、できた数値計画と行動計画を俯瞰します。「これなら頑張れば達成できる」という納得感があるか。無理なストレッチになっていないかを確認し、経営計画が完成します。

次回より、各ステップの詳細を書いていこうと思います。

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