原価計算【第1回】なぜ原価計算をするのか?そして、やっていない会社に起こる“恐ろしい未来”
原価計算を行う理由は、大きく分けて二つあります。
一つは外部報告目的。
もう一つは内部使用目的です。
外部報告目的とは、適正な売上原価を算定し、自社の財政状態や経営成績を正しく外部の投資家や金融機関、利害関係者に伝えるためのものです。制度会計の世界では、こちらが基本になります。
一方、内部使用目的は、経営意思決定のための原価計算です。
販売価格をどう決めるか。
どの製品が儲かっているのか。
どの工程が非効率なのか。
どの取引先を伸ばすべきか。
企業によって使い方は様々ですが、本質は「意思決定の精度を上げること」です。
このブログでは、外部報告のための原価計算ではなく、経営に使う原価計算について解説していきます。
原価を正しく知らない会社に起きること
原価をきちんと算定していないと、どうなるでしょうか。
ここで、過去に遭遇した事例を簡略化して紹介します。
ある会社では、製品Aを90円で販売していました。
社内では「十分利益が出ている」と思われていました。
なぜなら、原価として集計していたのは変動費のみだったからです。
しかし、固定費を含めて適正な原価計算を行ったところ、製品Aを1個作るのに実は100円かかっていたことが判明しました。
つまり、売れば売るほど赤字。
当時、社長がこう言いました。
「赤字で販売しているということは、うちがお客さんということだ。」
言い得て妙だと思いました。
確かに、その通りです。
経営判断を誤らせる原価のズレ
もう一つの例です。
取引先A、B、Cの3社と取引していた会社がありました。
社内の資料では、
Aは利益率が高い
Bは利益率が低い
Cは中程度
とされていました。
そのため、Aとの取引を拡大し、Bを縮小しようとしていました。
しかし、原価を再計算してみると、実態は逆でした。
Aは原価が過小に計算されていたため、実際の利益率はもっと低かった。
Bは原価が過大に計算されていたため、実際はもっと利益が出ていた。
この結果を見て、経営陣は判断を見直しました。
もし原価を見直さなければ、
儲からない取引を拡大し、儲かる取引を縮小するという逆の意思決定をしていたことになります。
これは、怖い話です。
どんぶり勘定の落とし穴
中小企業で最も多いのは、製品別や取引先別の限界利益を算定していないケースです。
「取引量が多いから儲かっているはず」
実際に計算してみると、
変動費さえ回収できていないケースもあります。
量が多い=儲かる
ではありません。
在庫が利益を歪める
原価計算を正しく行わないと、在庫金額にも影響します。
売上原価は、
期首在庫+当期製造原価−期末在庫
で計算されます。
つまり、原価が間違っていれば、在庫金額がズレ、損益もズレます。
さらに重要なのは、制度上の原価計算では、在庫を積み増すと利益が増える構造になっていることです。
売れていないのに利益が増える。
これは不正ではありません。制度上そうなっています。
しかし、在庫が売れなければ将来必ず経営を圧迫します。
原価計算は、単なる事務作業ではありません。
経営の見え方を変えてしまう装置なのです。

