資金繰り【第2回】

事業計画から資金繰り計画へ

― お金の流れは、事業の写し鏡 ―

資金繰り計画は“結果”である

資金繰り計画表を作ろうとすると、
「とりあえずエクセルで作ってみよう」と考えがちです。

しかし順番は逆です。

事業計画 → 資金繰り計画
この順序を飛ばすことはできません。

なぜなら、資金繰りは
事業のやり方を、そのままお金に翻訳したもの
だからです。


事業計画とは何を書いているのか

事業計画とは、
「誰と、どんな関係を、どんな条件で結ぶのか」
を整理したものです。

  • A社にいくら売るのか
  • その代金はいつ入金されるのか
  • どこから仕入れ、いつ支払うのか
  • 従業員にいくら、いつ給料を払うのか

これらはすべて、人との関係性の設計です。

人と関われば、必ずお金が動きます。
だから、事業計画がなければ、資金繰りも描けません。


損益をお金に落とす

事業計画では、まず「損益」を作ります。

売上、仕入、人件費、経費。
これらを月別・取引先別に並べます。

次に、それぞれに
「いつお金が動くか」という条件を付けます。

  • 売上は翌月15日入金
  • 仕入は月末締め翌月末払い
  • 給与は25日払い

こうして、損益は“キャッシュの予定表”に変わります。

ではここで、損益とキャッシュの”ずれ”を見ていただこうと思います。
”黒字倒産”という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、そのからくりがわかるはずです。

① 事業計画(損益ベース)
※売上・費用は「発生ベース」
区分条件2月3月4月
売上高
A社月末締・翌々月15日入金1,5001,000500
B社月末締・翌々月15日入金300500300
C社月末締・翌月末入金200100100
売上計2,0001,600900
仕入・費用
D社月末締・翌月末支払600500200
E社月末締・翌月末支払300400100
従業員給与月末締・翌月25日支払100100100
その他経費月末締・翌月末支払505030
費用計1,0501,050430
営業利益950550470

② 資金繰り表(入出金ベース)
入金の部(※翌々月入金に注意)
入金元条件3月4月5月
A社翌々月15日入金1,5001,000
B社翌々月15日入金300500
C社翌月末入金200100100
入金計2001,9001,600

支払の部
支払先条件3月4月5月
D社翌月末支払-600-500-200
E社翌月末支払-300-400-100
従業員翌月25日支払-100-100-100
その他翌月末支払-50-50-30
支払計-1,050-1,050-430
③ 月次キャッシュフロー
3月4月5月
入金計2001,9001,600
支払計-1,050-1,050-430
入出金差額-850+850+1,170
④ 3月を「損益」と「現金」で並べる
視点金額説明
営業利益(損益)+5503月に提供した仕事の成果
入出金差額(資金)-8503月に実際に動いた現金
差異1,400翌々月入金による時間差

3月は、事業計画上では①を見ると、550万円の営業利益が出ています。
しかし、③の資金繰り表を見ると、実際の現金は850万円減少しています。

これは、売上の多くが 翌々月入金 である一方、
仕入や人件費は 翌月には支払われている ためです。

つまり3月は、
「過去の仕事に対する支払い」と
「まだ入ってこない売上」の板挟みになっている月なのです。

この構造を理解せずに経営を続けると、
黒字であっても資金が尽きる事態が起こり得ます。

資金繰り表は機械的に作れる

ここまで来れば、資金繰り表は難しくありません。

やっていることは、

  • 条件を当てはめる
  • 時間をずらす

それだけです。

エクセルに式を組んでおけば、新しい取引先が増えても行を足すだけ。
悩むべきは数字ではなく、前提条件です。

魂が入るのは事業計画。
資金繰り表は、その結果です。

次回は、この表を見て
なぜ資金繰りが苦しくなるのか
そして どう手を打つかを解説します。

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