原価計算【第2回】原価計算の本質はたった2つ ― 難しく考えない基本設計

前回は、原価計算をしていない会社に起こり得る未来についてお話ししました。

今回は、「では原価計算とは何なのか?」という本質に入ります。

書店に並ぶ原価計算の本は分厚く、専門用語も多く、正直読む気が失せた経験がある方も多いのではないでしょうか。私自身もそうでした。

しかし、原価計算の本質は驚くほどシンプルです。

原価計算とは、製造にかかわって発生したコストを、どのように製品ごとに振り分けるか。

これだけです。

どんな計算方法であれ、結局はこの一点に集約されます。


考えるべきは2つだけ

原価計算で本当に考えるべきことは、次の2つです。

  1. 製造にかかったコストはいくらか
  2. それをどの基準で製品に配分するか

個別原価計算、総合原価計算、工程別原価計算、ABC、マテリアルフローコスト会計…。名前は違いますが、やっていることは「配分方法が違う」だけです。

内部利用目的であれば、配分方法は自由に設計できます。制度会計に合わせる必要はありません。大事なのは、経営判断に使える形になっているかどうかです。


ステップ1:原価発生部署を定義する

まず最初にやるべきことは、「どこで原価が発生しているのか」を明確にすることです。

自社の組織図を見てみてください。

製造に関与している部署はどこでしょうか。

加工部門、組立部門、検査部門、修繕部門、運搬部門…。会社によって違いますが、製造に関係する部署を洗い出します。

これらを「原価発生部署」と定義します。

そして、その部署で発生した費用を、すべて製造にかかった費用と考えます。

ここが出発点です。


ステップ2:費目別に整理する

次に、その原価発生部署で発生した費用を分類します。

一般的には次の4つです。

・材料費
・労務費
・経費
・外注費

そして重要なのは、「この製品のために使った」と明確に言えるかどうかです。

特定の製品に直接紐づく費用は「直接費」。
どの製品のためか明確でない費用は「間接費」。

この区分が原価計算の骨格になります。

直接費はそのまま製品に集計できますが、問題は間接費です。


製造間接費がズレを生む

直接費は比較的わかりやすいです。

材料をいくら使ったか。
外注費がいくらかかったか。
製品別に把握できることが多い。

しかし、製造間接費は違います。

工場の減価償却費
水道光熱費
管理者の人件費
保守費用

これらは特定の製品だけのために発生しているわけではありません。

ここをどう配分するかによって、製品原価は大きく変わります。

しかし逆に言えば、配分の精度が多少粗くても、製造間接費を漏れなく集計することの方が重要です。

間接費を集計していない状態の方が、よほど経営判断に悪影響を与えます。


正確さと実務負担のバランス

原価計算は正確であることが望ましいのは当然です。

しかし、そのために現場が疲弊するほどの手間をかけるのは本末転倒です。

内部利用目的であれば、完璧を目指すよりも、

・大きなズレをなくす
・漏れをなくす
・判断に使える粒度にする

この3つを優先すべきだと私は考えています。


今の状態を確認する

ここで一度、自社の現状を確認してみてください。

・製造にかかる部署は定義できていますか?
・その部署で発生した費用は把握できていますか?
・直接費と間接費の区分はできていますか?

もしここが曖昧なら、まずはそこから整えれば十分です。

高度な原価計算方法に進むのは、その後で構いません。


次回は、
製造間接費をどう配賦するか
という、原価計算で最もズレやすいポイントを具体的に解説します。

ここを理解すると、原価計算の仕組みが一気に立体的に見えてきます。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です