資金繰り【第1回】
売上があるのに、なぜ資金繰りは楽にならないのか
― 資金繰りの全体像と基礎概念 ―
「売上はそこそこあるはずなのに、通帳残高を見ると安心できない」
「毎月忙しく働いているのに、なぜかお金が残らない」
こんな感覚を持ったことはありませんか。
実はこれは、あなただけの悩みではありません。
多くの中小企業で、同じような違和感が静かに積み重なっています。
人件費の上昇、原材料や外注費の高騰、光熱費や物流コストの増加。
今の環境では、何もしなければ利益は自然に削られていく構造になっています。
それでも多くの経営者が、
- 何から手を付ければよいのか分からない
- 資金繰りを「感覚」で捉えている
という状態に置かれています。
そこで本記事では、
**資金繰りを楽にするための“考え方の地図”**を、全3回で整理していきます。
第1回はその土台となる「資金繰りとは何か」「なぜ分かりにくいのか」を扱います。
資金繰りとは何か
資金繰りとは何でしょうか。
私はシンプルに、
「会社が事業を続けるために、必要な資金を、必要なタイミングで確保し、使い切らずに回すこと」
だと考えています。
ポイントは「利益」ではなく「お金が足りるかどうか」です。
会計上は黒字でも、
- 支払いが先
- 入金が後
になれば、会社のお金は減っていきます。
資金繰りは、この“時間差”を管理する営みです。
資金繰りには2つの視点がある
資金繰りは、時間の向きで2つに分かれます。
1つ目は 資金繰り実績表。
これは「これまで、どうお金が動いてきたか」を振り返るものです。
2つ目が 資金繰り計画表。
こちらは「これから、どうお金が動くか」を見通すものです。
多くの経営者が見ているのは前者だけです。
しかし、本当に重要なのは後者、つまり 未来のお金の流れです。
金融機関との対話や、借入判断、返済計画の根拠になるのも、すべて資金繰り計画表です。
日繰りと月繰り
資金繰り表には粒度の違いもあります。
- 日繰り表:毎日の入出金を追う
- 月繰り表:月単位で把握する
日繰り表は精度が高い反面、手間がかかります。
よほど切迫していなければ、月繰り表で十分です。
重要なのは「完璧さ」ではなく、「先が見えること」です。
なぜ資金繰りは分かりにくいのか
資金繰りが分かりにくい最大の理由は、
損益とお金の動きが一致しないからです。
会計上は、
- 商品やサービスを提供した時点で売上が立つ
- 仕入や外注も、提供を受けた時点で費用になる
一方、現実のお金は、
- 30日後
- 60日後
に動くことがほとんどです。
このズレが、「儲かっているのに苦しい」という感覚を生みます。
次回は、このズレを前提に、
資金繰り計画表をどう作るかを具体的に見ていきます。

